伊東達矢校長ブログ

2024.12.19

部活動

 神戸市立の中学校は、2026年8月までに学校単位の部活動を全て終了し、地域のスポーツ団体などに運営を移管するとの発表がありました。
 2025年4月に開校する愛知県立中高一貫校でも、部活動を「設置しない」と明言するところがあります(「明和附属中学校(普通コース)Q&A」2024年10月18日)。その理由として、「国の方針」と「授業後の時間帯に、自主的に探究活動ができる場を提供する必要」を挙げ、「平日の授業後や土日等にスポーツや芸術活動をしたい場合は、地域のクラブ等に所属して活動」するように求め、中学校単位で開催される全国行事などには「中学校としての大会参加もできない」としています(同)。
 確かに国は、「休日の運動部活動から段階的に地域移行していくこと」を基本に、「平日の運動部活動の地域移行は、できるところから取り組むこと」という方針を掲げています(スポーツ庁「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言」2022年6月6日)。また文化部活動についても、「休日の部活動の段階的な地域移行に向けて、子どもたちの質の高い文化芸術活動の機会を地域で整備・充実する」としています(文化庁「文化部活動の地域移行に関する検討会議」2022年7月29日)
 わたし自身は私立中高時代の6年間、柔道部に所属していました。入部したての中1のとき、高3の先輩と一緒に練習したことを鮮明に覚えています。毎日放課後に柔道場で練習、日曜や祝日には大会や昇段試験、長期休みには合宿と、部活動の思い出は尽きません。大人になって誰かと中高時代の話になると、「部活は何やっていた?」と聞いて盛り上がるのも、部活動の経験があるからです。運動部や文化部、そして「帰宅部」に所属する生徒がいて、それぞれに思いがありました。
 多くの私立学校が学校生活の魅力の一つに部活動を挙げています。進学校とされる私学にも「文武両道」を掲げて部活動に力を入れるところが少なくありませんし、伝統的な進学校ほど部活動も盛んな印象があります。中高一貫校なら部活動に6年間打ち込めることは大きなアピールポイントです。
 部活動は、同好の生徒が集まり、顧問教師の指導の下、学校教育の一環として行われてきました。運動能力や技術能力の向上以外にも、異なる学年の部員が交流することによる人間関係の構築や、責任感や連帯感の醸成といった教育的効果も見込めました。部活動が共感を呼ぶのは、それをテーマにしたドラマや小説、マンガが多数あることからうなずけます。中学へ進学した本校の卒業生たちが後輩に宛てたメッセージには、部活動のことがよく書いてあります。
 少子化など、学校を取り巻く情勢は厳しさを増し、また、いじめや不登校の問題、ICT活用の格差など、教育に関わる課題は複雑化、多様化しています。経験のない顧問が部活動の指導をせざるをえなかったり、休日に指導を求められたりという教師の負担の重さも指摘されています。部活動における「勝利至上主義」が子どもを疲弊させるという問題もあります。そんな中でも、学校選びをするに当たって、部活動の存在には依然として強いインセンティブがあると思えてなりません。

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