伊東達矢校長ブログ
2024.03.11
主体性と自主性
文部科学省は、「主体的な学び」を「学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる」ことと定義しています。その解釈はさておき、いま教育の場で「主体的であること」や「主体性」が重視されていることは間違いありません。
気候変動、環境問題、人口減少、国際紛争など、現代のわたしたちは答えが一つに決まらない課題に直面しています。このような時代にあって重要だとされるのが「主体性」なのでしょう。
よく似た言葉に「自主性」があります。
学校には様々な約束事があります。たとえば、廊下を走らない、話す人の目を見る、物の貸し借りをしないといったルールです。それらが決められた理由には、廊下を走ってけがをしたとか、目を見ないと聞いているかどうかわからないとか、貸し借りを重ねてトラブルになったとかいういきさつがあります。
また、授業の始めと終わりに起立して礼をする、給食の後に掃除をする、制服を正しく着用するといった決まりもあります。これらは、集団生活における規律の維持のために設けられた約束事です。
宿題や提出物を忘れたときのペナルティーも約束事の一つですが、これは習慣づけを徹底するという教育的見地から行われます。
こうした決められた約束事を、率先して実行できる性質を「自主性」と言います。「自主性」はすでに決められたことに対して実行されるものです。
これに対し、何をすべきかが決まっていない課題に向けて、自らの判断と責任のもとで行動する性質が「主体性」です。
つまり、直面する課題をどう判断し、行動するか迷ったとき、「どうしたらいいですか」と誰かに解決法を求めるのではなく、どうしてこの問題が生じたのかを考え、「こうしたらどうだろう」と自身の判断を提示し、「あなたはどう思う」と人に意見を聞けることが「主体性」であると言えるでしょう。
卒業式の式辞でこんなことを言いました。
「タイパ」「コスパ」がもてはやされる今日、効率性と実用性が優先する風潮があります。けれどもこれから中学、高校、大学へと学びを深めていく中で、表面的なことばかりに目を奪われてはいけません。受験勉強を通し、解法のテクニックを身につけるだけでは問題の本質に到達できないことや、言葉の知識が不足していると文章を深く理解できないことに気づいたはずです。
テレビやSNSで、にわか仕込みの情報を言葉巧みに滔々と述べている人がいます。その場しのぎの知識で軽々しく発信されていることを信じてしまわないように気をつけてください。広く知識を吸収し、それを使って深く考える姿勢を持った、思慮深い大人を目指しましょう。
「主体性」を育むにも、広範な知識と確かな情報を身につけることが必要です。学ぶことに興味や関心を持つことが「主体性」を持って行動する基本にあります。
伊東 達矢
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