伊東達矢校長ブログ
2023.12.19
盆栽教師
とかく教師は教えたがりです。知識を伝えたくてたまらない。間違いを指摘しないではいられない。子どもたちをもれなく理解できるようにしたくなります。その結果、子どもたちがそうかと納得した顔をすると、しみじみ教えがいを感じるものです。
子どもは授業を受けて先生にほめられ、うれしくなって学びを深めます。掛け算ができた、漢字を覚えた、英語で言えたという体験は、新鮮な喜びとともに吸収されていきます。知らないことを学ぶのは楽しく、知識が増えれば世界が広がります。
ただし、教師は教え過ぎに注意しなくてはいけません。子どもたちは何でも教えてくれるものと受け身になり、自分で考えなくなります。知識や情報は、それを身につけることが自分にとって必要だと思えたとき、本人の血となり肉となります。いまの教育に大切だとされている思考力、判断力、表現力にしても、自ら求めて課題を見つけたときに発露するものです。転ばぬ先の杖を我慢することも、教師がわきまえておくべき務めです。
教育の世界で有名な謎かけがあります。
「教師」とかけて「盆栽」と解く。その心は「待つ(松)」と「聞く(菊)」が大事。
一方的に教え込むのではなく、子どもたちが声を上げるのを待ち、それを聞いた上で子どもたち自身が組み立てる学びも必要です。
子どもに一つの絵を見せるとしましょう。
まずはその絵を観察して気づいたこと、見つけたことを発言させます。答えは一つではないので、どの子にも発見があるはずです。教師はどの子の発言も否定せず、全員が発言し終えるのを待ちます。「他の子と同じ」という意見もそのまま受け入れます。子どもは誰も気づいていないことを見つけるのが好きですから、突拍子もない意見も出ます。
次にそれぞれが発見したことから、どんなことを思いつくかを考えさせます。グループで話し合ってもいいのですが、子ども一人一人のオリジナルな発想を尊重すべきという観点から、できるだけ個々に考えさせます。「何も考えつきません」という子がいてもかまいません。そのとき教師が「例答」を示してはいけません。
最後に子どもたちから出た発想を組み合わせ、この絵についてのストーリーを作らせます。思いついた子同士で意図したことを聞き合うようにすると、話が発展します。そしてできあがったストーリーを発表します。
自分が考えたことをみんなの声を聞いてまとめあげるという経験は、学びへの決定的な動機づけになります。もっと知りたい、学びたいという意欲を醸成する環境づくりが今日の学校に求められています。
伊東 達矢
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