伊東達矢校長ブログ

2023.11.24

どうする、しつけ

 身が美しいと書いて「躾(しつけ)」という漢字を当てます。もともとは、裁縫のときに形を正しく保つために荒く縫い付けたり、田畑に作物を植え付けたりすることを「仕付け」と称しました。そこから子どもに礼儀作法を教え込むことになって作られた和製漢字(国字)です。

 一般にしつけという言葉は子育てで使われることが多いようです。「家庭のしつけが良い」「しつけが厳しい」「しつけが行き届きませんで」のように言います。「ぶしつけなお願いですが…」と話を切り出すこともあります。

 心身ともに成長期の子どもはしばしば「やらかし」ます。ルールを守れなかったり、善悪の判断を誤ったりします。だからしょっちゅう失敗しては叱られます。

 そんな子どもを叱るときの大人のフレーズは、だいたい次の三つです。

・「こんなことをするなんてどういうことなの!」

・「どうしてこんなことばかりするの!」

・「こんなことをしてどうなると思っているの!」

 三つのフレーズはしばしば無限ループとなって子どもたちに降り注ぎます。そして最後は「ちゃんと反省しなさい!」という言葉で締めくくられます。

 けれどもそうやって叱られても、なかなか反省できないようです。思うに、「怒られるのは嫌だ」「叱られるのは怖い」「見つかって損した」といったことばかりが身にしみて、叱る大人の目があるところでは言いつけを守っても、そうでないところではまた同じことをやらかすのです。それが露見すると、今度は「何度言ったらわかるの!」というフレーズを浴びることになります。

 叱られているとき、小さな子は目に涙をためて黙っています。肩をふるわせ、しゃくりあげることもあります。それが中学生ぐらいになると、「うるさい」とか「うざい」とか口答えするか、あるいはそっぽを向きます。むかし子どもだったわたしたち大人にも、身に覚えのあることでしょう。

 しつけは、子どもが自律できる人間へと道徳的に習熟していく過程においてとても大事です。そしてそのしつけの仕方は、人格の形成に大きな影響を及ぼすと言われます。だから大人は、子どものしつけ方についてよく考えなくてはいけません。

 名進研小学校では、学校だよりや学年通信、クラスレターなどで、繰り返し「お子さんを褒めてやってください」と伝えています。ただ、やみくもに褒めればいいというものではありません。子どもの「見て、見て」という声や、そう訴えるそぶりに応え、子どもの変化と成長を褒めてほしいのです。

 褒めてばかりいると調子に乗る、つけあがって努力をしないと言う人がいます。もちろん厳しく叱りつけなくてはいけないときもあるでしょう。でも、叱りたくなることは毎日のように起きますが、褒めたいと思うことは気をつけていないとスルーしてしまいがちです。「良いことをしたから褒めようと思ったけれど、チャンスを逃したからまあいいか」ということはありませんか。しつけには、子どもの言動に気を配り、意識して褒めようとする姿勢が必要なのです。

 褒めるときも、叱るときも、きちんと相手の目を見ることです。特に子どもは、大人の言葉よりも表情を感じ取ります。本心から褒めているのか、それとも表面的に機嫌取りをしているのか、真剣に自分のことを考えて叱っているのか、腹立ち紛れに怒鳴っているのか、しっかり察知しています。

 言葉にするなら、わが事に引き寄せて具体的に言いましょう。知っている誰かと比べてはいけません。「お兄ちゃんはできなかったのに、あなたはすごいね」ではなく、「同じ年頃の子はできないことが多いのに、あなたはすごいね」のように。「同じクラスの○○ちゃんはきちんとできるのに、どうしてあなたはできないの」ではなく、「あなたがこれをできるようになったら、お母さんは本当にうれしい」のように。

 褒めるにしろ、叱るにしろ、できるだけ短くします。子どもにとって長々と説教されるのが苦痛なのはもちろん、褒められ続けるのもわざとらしく感じます。

 褒められることで、子どもは自分が大切にされていると感じます。そう感じた子どもは、自分に自信を持ちます。自信をつけると、人に頼ることも人から頼られることも素直にできるようになります。そうできるようにすることがしつけの基本です。

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