伊東達矢校長ブログ

2023.10.16

合い言葉

 名進研小学校の子どもたちは、スクールバス、自家用車、公共交通を使い、広域から通学しています。最寄りの駅やバス停まで歩く子どもたちは、終業後に校内で集合し、数組に分かれて集団で下校します。そのとき、リーダーの子が「1列、まっすぐ、マナーを守る」と言います。するとメンバーの子どもたちが声をそろえて「1列、まっすぐ、マナーを守る」と復唱します。この合い言葉は開校以来ずっと続いています。
 みんなでそろって声に出すという機会は小学校生活の日常にあります。
 朝の会の「おはようございます」に始まり、授業開始前の「お願いします」と終了時の「ありがとうございました」、給食時の「いただきます」「ごちそうさまでした」、帰りの会の「さようなら」まで、子どもたちは毎日声を合わせています。
 集会では、先生の呼び掛けに子どもたちが一斉に「はい!」と返事をします。声がそろわなかったり、元気がなかったりすると、「もう一度」とやり直しになることもあります。
 こうした指導について、「子どもを型にはめ、自由な発想を損なうものだ」と否定的に見る向きがあります。また、教員は教えるのが仕事なのだから、お願いされたりお礼を言われたりするのはおこがましいという声を聞いたこともあります(なお、本校では子どもたちと同時に教員も「お願いします」「ありがとうございました」と言っています)。
 小学生にはまだ、物事の善悪を判断する基準や、欲求や感情をコントロールする力が十分に備わっていません。だから、学校や家庭で子どもたちに道徳心や良心、善悪の基準や感情をコントロールする方法を教えます。そうすることで、だんだん他律から自律へ、規範や道徳心を子どもたちが自分自身のものにするようにしていきます。人に言われなくても、誰かが見ていてもいなくても、正しい行いができるようになります。知っている人に会ったとき、「ご挨拶しなさい」と言われなくても、自分から「こんにちは」と挨拶できる子どもになります。
 自由で型破りの発想は、型を知っている人からしか生まれません。規律が何たるかを学んでこそ自由を謳歌できるのです。自由を尊重し、個性を発揮するには型を身につけることが必要だと考えます。だから、「みんなでそろって声に出す」ことが「子どもを型にはめ、自由な発想を損なう」ことにはならないと思います。
 規律を学ぶ、型を身につけるといっても、むずかしいことではありません。
 ・あいさつができること
 ・お礼が言えること
 ・公共のマナーが守れること
 世間ではよく、「ろくにあいさつもしない」「お礼の一つも言わない」「礼儀作法がなってない」と人を非難する言葉を耳にします。そうした言葉を投げ掛けられるのは、子どものころに学ぶ機会がなかったからかもしれません。品格は一朝一夕に身につくものではありません。子どものうちから当たり前のように繰り返すことで磨かれるものです。
 「1列、まっすぐ、マナーを守る」という合い言葉には、本校の子どもたちに規律の大切さを理解し、品格ある人になってほしいという願いが込められています。

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