伊東達矢校長ブログ
2023.09.11
知りたい
現行の学習指導要領に「主体的・対話的で深い学び」という言葉が掲げられています。「主体的な学び」というのは、見通しを持って自らの学習活動を振り返ること、「対話的な学び」というのは、子ども同士や教職員との対話、書物を通した先哲の考え方を手がかりにして自分の考えを深めること、「深い学び」というのは、知識を関連づけて情報を整理し、課題解決策を見出すこととされます。要するに、「一方的に知識を吸収するだけでは21世紀を生き抜くための教育にはならない、対話と協働が大切だ」というのですね。これが「アクティブ・ラーニング」と呼ばれる学びです(最近めっきり耳にしなくなりましたが)。
「主体的・対話的で深い学び」に異を唱えるつもりはありませんが、その前提として一定量の知識が必要なことを忘れてはいけません。うろ覚えや又聞きではなく、確かな知識を身につけることがまず大切です。
インターネットですぐに情報が検索でき、AIが質問に答えてくれる時代、何が正しく、どれが自分の考えなのか、かえってわかりにくくなっています。初等教育を担う小学校は、基礎的な知識の習得にいっそう重きを置く必要があると思います。対話なり協働なりが有効に機能するには、参加者それぞれに共通する知識が求められるからです。
グループ活動の落とし穴は、討論や作業に参加しただけで満足してしまうことです。「みんなの前でこんなにしっかり発言できた」「みんなと協力してこんなにすばらしい作品を作り上げた」というのは、ひょっとしたらグループ活動でなくてもできたことかもしれません。
また、グループ活動に参加しない(できない)子どもが出ることがあります。指導する側からすると、そういう子にも何らかの役割を与える(タイムキーパーをさせる、書記をさせる、備品の管理をさせるなど)のが一つの手なのですが、そうしたアシスタント的な役割では、「主体的で対話的な学び」をしたことにはならないでしょう。
グループ活動に参加しない(できない)子どもがしばしば口にするのは「つまらない」です。「つまらない」と思っているからほかごとをすることになります。立ち歩いたり、ちょっかいを出したり…。そして注意されてふてくされます。
だから、グループ活動をする前には、そのグループ全員が持つべき知識あるいは世界観を共有するように入念な準備することが必要です。
子どもは知りたがり屋です。知識を得ることに貪欲です。その「知りたい」という思いは学びの原動力です。「知りたい」という子どもの思いに応えることは、教えることを生業にしている職責と考えます。
そしてまた、子どもは新しい知識を得ると言いたくてたまらなくなるものです。「ぼくはこんなことを知っているよ!」と言うときの表情は本当に得意そうです。知っていることを伝えたいというそんな思いには、「へえ、そうなんだ。よく知ってるね、すごいね」と応えます。そうすると子どもはますます知ろうとします。
最近、『なぜ、おかしの名前はパピプペポが多いのか? 言語学者、小学生の質問に本気で答える』(川原繁人著)という本が出ました。ポケモンの「ピィ」よりも「グラードン」が強そうなのは、濁音に大きさや強さを感じるからだそうです。知ればきっと広めたくなります。広めることで自分の見識も確かなものになります。学校はそうした知識を定着させる訓練と練習の場なのです
伊東 達矢
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