伊東達矢校長ブログ
2023.05.12
AIにできないこと
チャットGPTは、質問を入力すると、対話形式でAI(人工知能)が回答してくれるサービスです。わたしも使ってみました。小学校入学式の校長式辞について質問したところ、たちどころに文面が出てきました。「今日は特別な日である」こと、「教職員一同が全力でサポートする」こと、「家庭と学校の連携がより良い教育環境を築く上で重要だ」ということなどをバランスよく盛り込んだ、誠にそつのない式辞です。さらに、「式辞は適切な長さであると同時に、内容も明確で感動を与えるものになるよう心掛ける」と忠告までしてくれました。
チャットGPTでレポートを作成したら、簡単にできあがりそうです。教育の場で憂える声が上がるのもうなずけます。4月に群馬県で開かれたG7のデジタル・技術相会議では、AIの活用や規制について議論されました。
AIが発展すれば、人は学ばなくていいのでしょうか。もちろんそんなことはありません。
なぜ学校へ行くのかといえば、そこで身につける能力が社会を維持していくのに必要だからです。新しい知識や技術を得てそれを応用すること。集団の中で他者との関係づくりをすること。一人でできないことをみんなで力を合わせて成し遂げること。どれも学校で学びます。このうち、知識の多寡や技術の巧拙については、AIによって標準化できるかもしれません。チャットGPTで作成できるようなレポートの内容は、すでにAIで代替されているといえます。学校における教育の役割も変わっていくはずです。
AIは、課題に対してたくさんの回答を即座に用意してくれます。けれども、その選択肢から何をどう選ぶかという意思決定は、人間がしなくてはいけません。
進学先を考えるとき、学校や入試の情報を山ほど手に入れることができる時代にわたしたちは生きています。目が行きがちなのは入試の難しさ(偏差値)ですが、それより大事なのは、どういったいきさつでできた学校なのか(伝統)、どんな雰囲気の学校なのか(校風)、どこにあってどうやって通うのか(立地)です。それらを知るには、実際に足を運ぶのが一番です。イベントのあるときでなくてもかまいません。自分の目で見て感じたことは、気持ちを大きく刺激し、心に残るはずです。逆に「何か違う」という違和感を覚えたら、他の人にいくらすばらしく思えても、当人には合わないと判断していいでしょう。
肌感覚という言葉があります。情報のあふれる現代だからこそ、肌で感じるものが大事なのです。直接見聞きしたことや、体験したことから得られる実感を、AIは察知できません。課題を解決するための提案や展望を語ることはできても、実行して首尾よく成功したときに満足感を得たり、うまくいかなかったときに責任をとったりすることはできません。リスクを引き受ける覚悟を持てるのも人間ならではです。
現代の学校教育は、知識や技術の伝授についてはAIを活用することで補い、実地の体験を重ねることを通して、覚悟や責任感の伴った人間力を身につけることに注力すべきです。不確実な時代のいま、自分で考え、自分で決め、自分で伝えることが強く求められています。
伊東 達矢
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