伊東達矢校長ブログ

2023.01.27

インタビュー

 1年生が先生たちにインタビューをしています。校長室にもやってきました。

 トントンと扉をたたく音がします。扉は開いていて、「ノックしないでいきなりお入りください」と書いた紙も貼ってあるのですが、子どもたちは教えられた通りノックをします。そして「1年○組の○○です」「○○です」「○○です」と、一人ずつフルネームで名乗ると、声をそろえて、「校長先生にインタビューをしにきました。入ってもいいですか」。

 「どうぞ」とわたしが言うと、もじもじ、きょろきょろしながら入ってきます。「ぼく、校長室に来たの、3か月ぶり」「ぼく、初めて」とひそひそ言い合っています。

 「さて、質問をどうぞ」と促すと、最初の子が言いました。「校長先生の好きなくだものはなんですか」。

 待ってましたとばかり、「バナナ、です」とわたしは大きな声で答えました。

 子どもたちは大急ぎで「バナナ」とタブレットに書き込みます。続いて「どうしてバナナが好きなんですか」と聞いてきます。

 「甘くて安くてうれしいから」と答えると、「あまい」「やすい」「うれしい」と書いています。

 「好きな本はなんですか」と別の子が聞きます。

 わたしは「『くまのパディントン』です」と言って、置いてあった本を見せます。子どもたちは身を乗り出して表紙をのぞきこみます。「読んでもらったことある」と目を輝かせる子がいます。「パディントンはイギリスの駅名で、そこでブラウンさんに会ったからその名前になったんだよ。これは校長先生が小学生のときに買ってもらった本です」と説明すると、「たしかにふるーい」「やばーい」と、にこにこしながら反応します。

 次の質問は「家の中で好きな場所はどこですか」でした。

 一呼吸置き、「トイレ、です」とゆっくり答えました。子どもたちは大騒ぎ。口々に「どうしてトイレが好きなんですか」と言います。

 「一人になれる場所だからです」と言うと、すぐに「ぼくはお母さんとトイレに行くよ」「わたしも」と言う声が聞こえてきます。

 一人ずつ違う質問をしてインタビューは終わり、「ありがとうございました」「失礼します」と頭を下げて、嵐が去るように子どもたちは教室へ戻っていきました。

 インタビューは、人に話を聞くときの姿勢を学び、コミュニケーションの手順を身につける機会になります。きちんと挨拶をして、お礼を言うことの大切さも学びます。質問した子にとって、インタビューで得た答えは「ぼくが聞いて、ぼくが引き出した答え」であり、自分からしかけて手に入れた成果です。子どもたちの得意げな顔を見て、学びは本来こうして得るものだと実感します。「トイレは一人になれる場所」と聞いて、わがごとに引き寄せて発言した子は、情報の整理・分析ができたといえます。

 「主体的・対話的で深い学び」を学校教育の中で経験することが大事だと叫ばれていますが、学校ではずっと以前からそれを実践しているのではないでしょうか。「学びに向かう力」は、一方的に与えられるものではありません。身につけるための機会を設けることで子どもたち自らが育んでいくものです。

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