伊東達矢校長ブログ
2022.12.09
お行儀よく
入学説明会で「ノーブレス・オブリージュ」という言葉を紹介しました。ノーブレスは「貴族」、オブリージュは「義務を負わせる」で、「位高きは徳高きを要す」という意味です。この言葉を知ったのは前任校の東海中学・高校に勤めていたときでした。当時学習指導部長だったN先生は、「東海生は、社会的、経済的に恵まれている。だから自分の利益を追求するのではなく、社会全体に貢献しなくてはいけない。ノーブレス・オブリージュの姿勢が必要だ」といった発言をしました。高校1年生のときに、京大を出たばかりのN先生に習ったわたしは、「あいかわらず気取った言い方をするなあ」と鼻白みつつも、妙にこの言葉が頭に残ったものでした。そしていま、私立小学校の校長という立場になって思い出したのです。
私立小学校へ通わせる家庭は経済的に余裕があり、保護者は社会的な地位を持つ方が多い。であるなら、その子弟、子女の教育にはまさにノーブレス・オブリージュの考え方がふさわしいと言えるでしょう。本校の「自律と感謝の気持ちで社会に貢献する」という校訓にもかないます。
では、ノーブレス・オブリージュの考えをどのように教育に反映したらいいでしょうか。わたしなりに解釈し、子どもたちに「お行儀よくすること」を求めたいと考えました。お行儀よくするには、次の3つのことができなくてはいけません。
①挨拶ができること。
②お礼が言えること。
③公共の場の約束を守れること。
考え方は立派でも実行しないと身につきません。だから、わたしは子どもたちの前で、「おはようございます」「ごきげんよう」といった挨拶の言葉、「どうぞお先に」「ありがとうございます」「お疲れの出ませんように」といったお礼やねぎらいの言葉を、意識して使うようにしています。また、みだりに大声で騒がない、脱いだ靴を揃える、出された食事を残さないといったマナーも、子どもたちとともに実践しています。
子どもは周りの大人を見てお行儀のよさを学びます。子どもに「お行儀よくしなさい」と言うよりも、お行儀のよさを大人が見せることです。お行儀のよさを身につけた子どもがいると、その他の子どもがまねるようになります。もちろん四六時中お行儀よくするのは疲れます。自分一人きりのときや気の置けない仲間といるときは、だらしなくリラックスしていてかまいません。時と場所をわきまえることができて初めてお行儀のよさが生きるのです。
声の届かないところにいる人に手を振ったら振り返してくれる。頭を下げたら向こうも下げる。右折しようとしていたら道を譲ってくれる。こういうのもお行儀のよさのあらわれです。掲示物が傾かずに貼られている。筆箱の中の鉛筆が削ってある。持ち物に名前が書いてある。気になるか気にならないかという問題ではなく、お行儀よくできているかいないかという次元のことなのです。
「位高きは徳高きを要す」。高き徳はこうした実践の積み重ねによって生まれます。
伊東 達矢
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