伊東達矢校長ブログ
2022.05.19
図に乗るな
校長に着任して1か月が過ぎました。子どもたちをはじめ、多くの人を相手に挨拶したり、話したりする機会が続きます。中高一貫の男子校に一教員として勤めていた3月までとはまったく勝手が違います。組織を代表する立場の重さを日々痛感しています。また、所変われば品変わるといった案配で、職場の環境や慣習も異なりますから、とまどうこともしばしばです。これは海外で過ごしたときの感じに似ています。
わたしは立場や環境の変化を刺激として受け止め、転身先で大いにがんばろうと意気込んでいました。
そんな折、「調子に乗ってはだめ」と妻に釘を刺されたのです。せっかく張り切っているのに、なんて水を差すことを言うんだろうと思いましたが、よく考えてみるとうなずかされることがありました。
現場の先生たちにとっては、まるで知らない人間が突如「新校長でござい」とやってきたのです。まさに青天の霹靂で、中には引く人もいたはずです。わたしが来たことで先生たちにストレスを与えている可能性に思いが至りませんでした。
また、自身の働きについても考えを改めました。
前職では、受け持っている授業、担任するクラス、主任ならその学年団や教科会について、それぞれ自分なりに工夫し、つつがなく仕事を進めていけばよかったのです。生徒や保護者、同僚の先生からダイレクトに反応があり、それがやりがいにつながっていました。教務と呼ばれる役職を経験したことで、自分の提案を学校全体の運営に反映させることもできました。30年以上同じ職場で仕事し、だいたい学校のことはわかっているつもりでした。教師としての経験を積み、ベテランと呼ばれて頼りにされることが職責を果たす上でのエネルギーになっていました。
これまでは、自分がどんな仕事をするにしても、そのことを承認する人がいました。ところが校長という職は、承認してもらう側でなく、承認する側なのです。決められた枠の中で何をするか、何ができるかを考えるのではなく、誰にどんなことができるのかを見きわめ、何をしてもらうべきかを決める立場になったのです。一方で、むやみに校長が「こうしろ、ああしろ」と言うと、いたずらに周りを振り回すことになりかねません。
校長という立場で指示を出すばかりでは、学校全体の発展は望めないということに気づきました。一人の持つ経験で解決できることには限界があるからです。問題点に向き合い、新たな変革を起こすには、組織の人的リソースを生かさなくてはいけないのです。
わたしはいま、子どもたちに対し、「あなたならどうしますか」「君ならどう考えますか」と意識して言うようにしています。そして先生たちには、「子どもたちのためにどんなことをしたいですか」「学校のためにどんなことができますか」と問いかけています。
会社の代表になった同級生のKさんに「創発組織」という言葉を教わりました。体制を変えても、指示・命令で動く組織のままではマネジメントはうまくいかない。メンバーが全体にとっていいと思ったことを、自発的にチームで共有して成果につなげ、情報を活用して動く組織にしなくてはいけない。それが「創発組織」です。
学校はフラットな組織ですので、ともすればメンバーが前例を踏襲することにこだわり、受身になってしまうきらいがあります。学校の中に進取の気概が満ち、発展に向けて新しいことに意欲的に取り組めるような環境を創ること、それがわたしの役目であると心得ました。校長になったことで図に乗らないよう自戒しています。
伊東 達矢
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