伊東達矢校長ブログ

2022.07.19

読書感想文①

 夏休みなど長期休みの前になると、多くの学校で「読書感想文」が宿題に出されます。この読書感想文が苦手な(ありていに言えば嫌いな)子どもは少なくありません。読書感想文が苦行だったと思い返す大人もいるでしょう。

 そこで2回に渡って読書感想文について書くことにします。

 なぜ子どもに読書感想文を書かせるのでしょう。本を読んでほしいからでしょうか。書くことに習熟してほしいからでしょうか。

 公益社団法人全国学校図書館協議会が主催する「青少年読書感想文全国コンクール」の開催趣旨にこんなことが書いてありました。

◇子どもや若者が本に親しむ機会をつくり、読書の楽しさ、すばらしさを体験させ、読書の習慣化を図る。

◇より深く読書し、読書の感動を文章に表現することをとおして、豊かな人間性や考える力を育む。更に、自分の考えを正しい日本語で表現する力を養う。

 ここには本を読むことと感想文を書くことの目的が書いてあります。では、どうやってその目的を実現するのでしょうか。目的の達成には手段が必要です。だから読書感想文を課すなら、どうやって書くのかを教えなくてはいけません。

 学校ではどのように指導しているのでしょう。「思ったまま感じたままを素直に書きなさい」というのを聞きますが、わたしに言わせれば無茶振りもいいところです。それができれば苦労はありません。子どもは「おもしろかった。」くらいしか書けません。それで無理やり指定の字数に届くように原稿用紙のマス目を埋め、ろくろく読み返しもせずに提出する。そうなりがちです。これでは「読書の感動を文章に表現する」ことにはなりそうもありませんし、「豊かな人間性や考える力」も「自分の考えを正しい日本語で表現する力」も身につきません。

 読書感想文に悩む子どもたちは、インターネットに頼ります。実際、中学校教師をしていたとき、『円周率の謎を追う』(鳴海風著・くもん出版)の感想文を集めたところ、「関孝和の生き方から学んだこと」として「決められたレールの上にいても人生の行き先は自分次第で変えられるのかもしれないと思いました」としめくくったものがいくつも出てきました。ネット上のサイトにある感想文を丸写したのです。

 読書感想文を書いてどんな力がつくのか、子どもたちは実感できていません。そもそもどうやって書くかをほとんど教えられていないから、丸写しするしか手がないのかもしれません。子どもたちが読書感想文に意義を感じられないのなら、それは書き方を教えきれていない教師の責任です。

 次回は、国語教師の端くれとして読書感想文の書き方、それにかかる時間などを具体的に紹介しようと思います。


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