伊東達矢校長ブログ
2022.10.21
しなやかさ
子どもはかわいがられる存在です。いくらでも愛情を吸収できます。子どもが初めて歩いたとき、初めて「ママ」と言ったとき、親ならうれしくて「えらい、えらい」とほめるでしょう。子どもは、どんなにほめようと、いくらかわいがろうと、愛情の注ぎすぎにはなりません。
子どもにとって一番うれしいのは、大好きな人にほめられることです。ほめて育てることに異論をとなえる向きもありますが、子ども時代にほめられた経験が少ないと、自己肯定感を得られないとわたしは思います。たくさん語りかけ、話に耳を傾けて、その子を大事に思っている気持ちが伝わるようにしなくてはいけません。
やみくもにほめればいいというものではありません。けがにつながるような危ない行為や軽はずみな言動には、語気を強めて注意することも必要です。学校という集団社会では、トラブルやもめごとを避けて通ることはできません。けんかもいたずらも必ず起きます。いじめも見逃せません。そんなときに決然と叱ることをためらわず、子どもに是非を教えるのは教師の重要な役目です。見て見ぬふりはできません。子どもは大人の嘘や建前に敏感です。必ず見透かされます。子どもだからといっていいかげんな態度で向き合ってはいけません。
真剣に話をすると、たとえこちらの言っている内容が十分わからなくても、子どもは自分の理解が及ぶ範囲で、一生懸命答えようとしてくれます。
秋の読書月間に、1人6冊以上の本を読むと1枚のピースがもらえ、貼り合わせると担任の先生おすすめの本のパズルが完成するという企画を実施しています。メディアルームの廊下に貼り出されたパズルの完成度を見ると、上から順番にピースが貼られているクラスと、あちこちばらばらに貼られているクラスとがありました。その理由をたまたまそこで会った子に聞いてみたところ、少し考え、6冊読めた子から上から順番に貼っていくクラスと、自分の出席番号のところに貼っていくクラスがあるのではないかと分析してくれました。言われたらそうかと思うことでも、自分で考えたことが大事で、わたしは「なるほど。えらいなあ」とほめました。
レジリエンスという言葉があります。しなやかさを意味する英語で、困難や逆境に立ち向かうことのできる力を指します。多様化し、複雑化する現代にあって、レジリエンスを鍛えることが大切だと言われます。自発的に考えることは、子どもたちがレジリエンスを身につけるのに役立つと思います。
疑問に思ったことの答えを知りたいという好奇心は、子どもにも大人にもあるはずです。でも日常生活の忙しさにかまけていると、急ぐことでもなく、実利のあるわけでもないことはとかく後回しにしてしまいがちです。そうやって後回しにすると、まず振り返ることはありません。知ったこと、知ろうとしたことをほめられることもありません。教室に迷い込んできたトンボの行方を追い、校内の里山に散らばるドングリを数えている子どもたちの姿を見ていると、そうした時間の大切さをしみじみ感じます。子どもが目の前にあるものへの興味を失わないように、周りの大人は付き合ってやりたいものです。わたしも子どもたちといっしょにトンボやドングリに目をやる時間を持とうと思います。
伊東 達矢
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